パレード


つめたい春の雨に洗われて歩き
初夏の光に灼かれながら唄う

少年と少女と母たちの
失われた黒曜石の瞳が
遠い空から見ていた


君たちのささやかな
真昼のパレード


冷笑や無関心が
突風にまぎれて刺さり


非力さに落ち込む黄昏
すべてが虚しく思える夜

誰かが新しいペンで
羊皮紙に銀の文字を
書き込む音がする


遥かな時空から
YESと答える声がある


他者の痛みを感じる皮膚を
祝福する掌がある


やわらかく淡々と
歩き続ける君たちの一瞬は


星界の日誌に刻まれて
生命の種子となる











青い鳥


君の手をすり抜け
遠い川面から
かすかな声を響かせる
あの小さな鳥は

魔法とも伝説とも
縁のないカワセミ

幸福は
すぐ近くにあると
言われても

疲れた心には
ものみな
ひからびて
退屈に映るだろう

君がいま
気づきさえすれば

生まれた瞬間から
君はすべてを与えられていると
悟りさえすれば
いいのに

何気ない普通の日の
ありふれた光に酔うことも知らず


幻の鳥の羽ばたきを
君は春の砂漠に探す







罪と罰


蒼い春霞の下で
ゲームに熱中する彼ら

いかにして地上を
悪魔の楽園に変えるか

どれだけたくさんの生命を
壊すことが出来るか

殺戮と嘘は
彼らのサプリ

操りやすい民は
彼らの玩具

高笑い 含み笑い
こだまが廃墟に響く

彼らは知らないのだ
人間は騙せても
宇宙のみなもとで
沈黙するあの翼が
かすかに動いて

彼らを叩き潰す日が
来ることを

この世では
すべてが思い通りで
浮かれていても

彼らはゾウリムシにさえ
生まれ変わることは
許されず

永遠に抹消される











メイストーム


艶めく五月に
何者かの怒りが空を裂き

なだれおちる雨
巻き上がる旋風
壊れかける心

流されて目覚めた君は
生きていて良かったと
胸を押さえた

ほんのいっとき
みんなを正気に戻らせて
春の嵐が去ると

また悪い道化師が
大通りでシンバルを叩き
白塗りの笑顔で叫ぶ

生命より尊いものがあるよ
それはとにもかくにも崇高で
素晴らしい価値あるものさと

明るい陽が街を照らして
道化師の尖った指で配られる
金色のキャンディ

それを頬張りながら
君は何か言おうとして
思い出せないのだ

ついさっきまで憶えていた
昼の夢のように
最後のひとつが見つからない
古いパズルのように

その大切な言葉を
どうしても
君は思い出せないのだ










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